日本時間16時から始まった男子準決勝の日本対中国。4時間に迫る激闘の末、中国が日本を3対2で下し、決勝進出を決めた。
世界選手権の団体戦で、中国男子をここまで追い詰めたチームは、中国が2001年世界選手権大阪大会で王座を奪回して以降の9大会の全てを合わせても記憶にない。日本は敗れはしたが、世界中の卓球ファンを震わせる戦いを見せた。
●男子決勝トーナメント準決勝
〈中国 3-2 日本〉
◯樊振東 5、10、4 戸上
王楚欽 8、-8、-6、-9 張本◯
◯馬龍 -8、5、5、2 及川
樊振東 -7、6、3、-9、-9 張本◯
◯王楚欽 10、7、4 戸上
日本が不動のオーダーを立てたのに対し、中国はもっとも信頼感の高い馬龍を3番に置いた。今大会では10代から20代前半の選手たちが頭角を現す中で、33歳の馬龍は体力的に限界に近い状態だったのだろう。だが、このオーダーの狙いはそれだけではない。長く団体戦で中国チームを支えてきた許昕が抜けたことで、中国は次代の中心選手を育成する必要が急務であり、王楚欽がそれを担う選手として「試練」を与えられた。
1番は戸上対樊振東。戸上はスタートから攻めの姿勢を見せたのに対して、樊振東は無理に攻めずに様子見をする。それだけ余裕があるのだろう。樊振東は以前までの超攻撃スタイルから脱却し、回転量を上げた質の高いボールを使ってチャンスを作るプレーになっている。戸上に対しても無理打ちをせずに、しかし要所では戸上の心が折れるような攻撃を見せる。
戸上は2ゲーム目は順応を見せたがジュースを落とすと、3ゲーム目は力尽きた。中国が先取点。
樊振東は戸上を寄せ付けなかった
2番の張本は「自分が絶対に2点取る」という強い気持ちでコートに入る。1ゲーム目は台上のストップがやや甘くなって王楚欽の攻撃を許したが、2ゲーム目からはチキータで先に攻めて、ライジングバックドライブでグイグイ攻める。
また、張本は序盤で両サイドに打ち分けていたボールをミドルに送り、王楚欽の体勢を崩すことに成功。4ゲーム目を逆転で11-9で取り、勝負を決めた。日本が1点を返す。
ハリーが1点を奪い返す。中国は今大会で初失点
3番の及川は史上最強と称えられる馬龍と対戦。及川は臆することなくレジェンドに立ち向かうと台から離れたドライブの打ち合いで押して、1ゲーム目を奪う。
だが、2ゲーム目からフォアハンドの打ち合いをさけ、前につくプレーに切り替えた馬龍が奪うと、以降は完全に馬龍ペースになった。百戦錬磨、貫禄のプレーで馬龍が勝利。スコアこそ離されたが、及川は善戦したと言っていいだろう。
及川は持てる力を出して戦った
ギアを上げた馬龍はすさまじい強さだった
あとがなくなった日本。張本は樊振東に対して、スタートからライジングバックドライブを浴びせる。ゲームカウントが1-2と劣勢になっても張本の顔は死んでいない。ここから挽回できるという強い目を見せている。
張本は4ゲーム目を10-6リードから10-9まで追い上げられたが、このゲームを勝ち切ると、最終ゲームは現代卓球の最高峰とも言える超高速両ハンドラリーを繰り広げ、また中陣から息を呑むほどの迫力あるドライブの引き合いで得点するなど10-7でマッチポイントを握る。10-9から最後の1本を決めると、張本は床に倒れ込んた。見ているこちらも全身が震えるような戦いだった。
世界中が震えた一戦。張本が2点取り。中国越えを果たす
2対2になり、歴史を変えるべくコートに向かう戸上と、絶対に守り抜かねばならない王楚欽が対峙する。
戸上は1ゲーム目中盤で王楚欽を離すと9-4でリード。1ゲーム目を取って王楚欽に「心理的な圧」をかけることが必至だったが、10-12で逆転されると、2ゲーム目からは王楚欽のプレーが冴え渡る。
戸上の強烈なフォアドライブをバックのカウンターブロックで何本も弾き返すプレーを見せて、最後はとどめのフォアドライブを放った王楚欽がストレートで勝利。王楚欽が中国首脳陣から与えられた「試練」を最後の最後に遂行させた。
王楚欽は2点抜擢の大役に最後に応えた
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