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全日本卓球2023

「刺激をくれる一番身近な存在」2人合わせて全日本出場38回、荻原典和・直子兄妹がともにシングルス白星

 昨日から始まった男女シングルスに荻原典和・直子兄妹が登場。兄の典和は今大会のシングルスで2番目に年長の40歳、妹の直子は今大会の女子最年長となる37歳での出場となったが、ともに初戦で勝利をあげた。

 

●女子シングルス1回戦

荻原直子(円山クラブ) 8、5、-9、8 伊瀬真奈美(前橋女子高)

●女子シングルス2回戦

荻原直子 -10、9、-5、-8 高橋沙希(國學院大)

 

●男子シングルス2回戦

荻原典和(北海道アスティーダ) 12、3、4 浅津碧利(中央大)

●男子シングルス3回戦

荻原典和 -6、11、-7、-6 中村廉(瀬戸内スチール)

 

 まず先に試合に臨んだのは妹の直子。1回戦で高校生を破って2回戦に進んだが、惜しくも大学生に敗れた。しかし、3年ぶりの出場となった全日本シングルスでの勝利に笑顔を見せた。

 そして、その後に登場となった兄・典和も直子に負けじと会心のゲームを披露。初戦となった2回戦の相手は、2020年、2021年の関東学生選手権王者の浅津碧利だったが、相手のリズムをうまく外したプレーでなんとストレートで勝利。こちらも続く3回戦で敗れたものの、ともに40代、30代での出場で兄妹揃っての1勝はあっぱれ!と言うほかない。

妹・直子

兄・典和

 

 小・中学生時代は札幌の名門・円山クラブで監督を務める父・正憲さんのもとで腕を磨いた典和と直子。典和は仙台育英高時代にインターハイ学校対抗で準優勝、直子は札幌星園高時代にインターハイシングルス3位と活躍し、大学卒業後はともにJR北海道に勤務して日本リーグでプレー。さらに、兄妹揃って全日本マスターズのタイトルを獲得し、30歳を越えても全日本一般へ出場し続けている。典和の16回目を越え、今大会がなんと22回目(!)の全日本出場となった直子に話を聞いた。

 

 「(全日本には)中学2年生の時に出たのが初めてなので、ありがたいことに人生の半分は出ていますね。学生の頃や実業団でやらせてもらっていた頃は『勝ちたい』っていう気持ちが強かったけど、30代になってからは、『出られるだけでありがたいな』っていう気持ちが本当に大きくなりました。

 兄については『ヤバい』っていう印象です(笑)。小さい頃は、良い成績を残す兄と自分を比べて嫉妬したりもしたんですけど、今は単純にスゴいと思うし、選手としての刺激をくれる一番身近な存在。お互い、怪我だけはしないように頑張っていけたら良いですね」

 

 ここ数年、練習は週に3、4日ほど。平日は大人と練習し、週末は高校生の練習に参加させてもらっているという。内容についても「体力があれば、高校生みたいにフットワーク練習をガンガンやりたいんですけど、そうもいかないので」と、3球目や4球目など実戦に直結した練習がほとんど。試合で狙われるパターンや、使えると感じたパターンを強化している。

 「年々、練習の内容も変わっているんですけど、今まで所属していた学校やチームが『自分で考えて練習する』という環境だったので、自然と考えるようになりました。自分で考える中で間違えることもあるんですけど、いろんな選手や指導者の方々の意見やアドバイス、プレーを参考にしながら、やってみてから良い部分をどんどん取り入れるようにしています」

 

 父の正憲さん曰く「とにかく卓球が好き」という荻原兄妹。とはいえ、今なお高いモチベーションで卓球に向き合うことができる理由は何なのか。シンプルに「なぜ、そんなに卓球が好きなのか?」と質問をぶつけてみた。

 「私の場合は(卓球を)強制されなかったのが大きかったのかなと思います。円山クラブでもそうですし、高校も家から通える公立高校で自由にのびのびやらせてもらえたので、卓球を嫌いになることがなかった。

 あとは父も言っていましたけど、私、本当に鈍臭くて、卓球以外の運動が全然できないんですよ。『運動神経悪い芸人』みたいな動きで、ボールを投げたりも全然(笑)。でも、卓球だけはずっと続けられて、そのおかげでいろんな人と知り合えたり、いろんな場所に行ったりできて、その楽しさがずっと続いている感じですね」

 

 印象的だったのが、取材の最後に直子がさりげなく口にしたひと言。「卓球やってなかったら、この歳になって高校生の友だちができたり、一緒になってキャッキャしたりできないですからね(笑)。楽しいですよ、やっぱり」。卓球人生は、まだまだ青春真っ盛り、キラキラ眩しく輝いている。

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