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全日本卓球2023

「和尚さんと先生」のペンドラペア、東海尚寛/山本亮太が男子ダブルス1回戦に出場

●男子ダブルス1回戦
齋藤輝心/中谷歩夢(浜松修学舎高) 7、3、9 東海尚寛/山本亮太(田辺クラブ)

男子ダブルス1回戦、最近では「希少種」になってしまったペンドラペアを第5コートで発見した。和歌山・田辺クラブの東海尚寛/山本亮太。東海が右の中国式ペンドライブ型、山本が左の日本式ペンドライブ型だ。対戦相手の浜松修学舎ペアも、中谷が右の中国式ペンドライブ型で、コートにペンドラが3人という珍しい光景が展開された。

希少なペンドラペアである東海尚寛(右)/山本亮太。左腕の山本がサービス・レシーブから積極的に先手を取りにいった

和歌山県予選では高見真己/定松祐輔(日鉄物流ブレイザーズ)に決勝で敗れて2位となるも、その後行われた全日本社会人で高見/定松が準優勝の好成績を収め、松下海輝/藤村友也とともに全日本への推薦出場が決定。予選2位の東海/山本ペアに全日本への切符が舞い込んだ。

攻撃の威力にまさる齋藤/中谷ペアに対し、左腕・山本のフリックと回り込みドライブ、中谷の台上プレーからの攻守で対抗した東海/山本ペア。3ゲーム目は接戦にもつれ、9ー9から山本が快速ロングサービスを連発したが、齋藤/中谷が冷静にレシーブを相手コートに運び、惜しくもゲーム奪取はならず。

初出場の全日本。球威にまさる高校生ペアに挑んだ

26歳の山本は県立田辺高校の教員で、卓球部の顧問。一方、27歳の東海はなんと田辺市にある臨済宗の寺院、報恩寺の住職を務める。普段の大会も、葬儀や告別式を行うのは避ける「友引」と重ならない限り、なかなか出られないという。「今回の全日本も法事が入っていたら出られなかったんですけど、奇跡的に出られました。もちろん仕事が優先ですから」(東海)。修行道場での3年半の修行時代は卓球を中断していたというが、地元の報恩寺に戻ってから田辺クラブでラケットを握るようになり、同じクラブで「ゴリゴリ練習していた」山本とペアを組んだ。

「全国大会は未知の領域だったので、シンプルに全国のレベルの高さを思い知らされました。こういった舞台に出させてもらったのは本当にありがたいこと。やることはやってきたから楽しむぞという気持ちでコートに入りました。
裏面は振る余裕がなかったけど、1球だけ振りました(笑)。対戦相手の中谷選手がめちゃくちゃ裏面がうまかったので参考にしたい。今回は初めての全日本で浮足立ってしまった部分もあるけれど、来年以降もまたこの舞台に戻って来られたらと思います」(東海)

「友引の日くらいしか大会に出られない」という東海さん(左)。全日本と法事が重ならなくて、本当に良かったです

一方、全日本出場が決まり、卓球部の部員や同僚の先生方も大いに盛り上がったという山本は、「サービスが緊張して思いどおりに出せず、大事なところで長くなって打たれてしまったのはちょっと悔いはありますが、それ以外は練習どおりにやれたし、来年に生かしたいですね」と語る。

「ロングサービスがめちゃくちゃ得意なので、3ゲーム目の9ー9で『これは来たな』と思ってロングサービスを2本出した。普通はみんな1本目は角当てしたりするけど、うまく対応されました。日本式ペンはかっこいいと周りの方は言ってくれるんですけど、特別なプライドはないです。これが自分のスタイルですから。今回の経験はこれからの指導にも生かせるし、ありがたい経験をさせてもらいました」(山本)。

おそらく今大会で最もユニークな、和尚さんと先生のペンドラペア。来年もぜひこの東京体育館に戻ってきてほしい。

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