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全日本卓球2023

「『夢』ではなく『笑』って生まれてきますように」。伊藤笑が笑顔で挑んだ6年ぶりの全日本

●女子シングルス1回戦
伊藤笑(金城大) -4、-2、-3 高田奈々美(愛知工業大)

 

大会3日目に行われた女子シングルス1回戦。金城大の伊藤笑(いとう・えみ)は6年ぶりに全日本の舞台に立っていた。

「『夢』ではなく『笑』って生まれてきますように」。彼女の名前にはそんな願いが込められている。

 

現在大学3年生の伊藤。「笑」という珍しい名前の由来を聞いてみると「もともとは『夢』と名付けられる予定でした」と語る。しかし、出産が難航し、生まれてくるのが難しい状態になった時に、お母さんの「出産が『夢』ではなく、『笑』って生まれてきますように」という願いから「笑」と名付けられたそうだ。

元気に育った伊藤は、H28年度の全日本ジュニアに中学生ながら出場。しかし、郡山女子大附高(福島)に進学後は思うように県予選で勝てず、全日本への出場はなし。今回が6年ぶりの全日本で、初の女子シングルスでの出場となった。

郡山女子大附高を卒業後は「関東や関西も頑張っている大学が多いと思うんですけど、地方で頑張っているのは魅力的だったし、練習の雰囲気も良かった」と関東でも関西でもなく、石川県にある北信越の強豪・金城大に進学。昨年の秋季北信越学生卓球選手権大会女子団体1部で優勝し、同期には全日学ベスト8の小林美優がいる伊藤は「大学に入って練習量も増え、周りに頑張る選手が多いのでレベルの高い大学で質の良い練習ができています」と、金城大での充実ぶりを話してくれた。金城大の部員同士で切磋琢磨する姿勢が、伊藤を6年ぶりの全日本出場へと導いたようだ。

高い実力を誇る金城大。部員同士で切磋琢磨して全国大会での上位進出を目指す

 

そして、25日の10時過ぎに始まった6年ぶりの全日本。相手は名門・愛知工業大の高田奈々美。「緊張して自分のプレーが全くできなかったので残念だった」と振り返る伊藤は1ゲーム目からラリー戦で高田に優位に立たれると、サービスでもフォルトを取られ「頭が真っ白になった」と思うようなプレーができずストレートで敗戦。女子シングルスでの初勝利は来年以降にお預けとなった。

4月から大学4年生になる伊藤の目標は「石川県で開催される全日学(全日本大学総合選手権 個人の部)に出場すること」。試合後にもかかわらず爽やかな笑顔でインタビューに応じてくれた伊藤笑。その名前のように、残りの大学生活を笑顔で走り抜けて欲しい。

笑顔が似合う伊藤笑。来年も全日本の会場でこの笑顔を見せてほしい

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