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世界卓球2023

第4シードとして挑む張本、初のメダル獲得なるか? 世界選手権男子シングルス展望

 5月20日(土)より南アフリカ・ダーバンでスタートする世界卓球選手権個人戦。アフリカ大陸での世界選手権開催は1939年のエジプト大会以来、84年ぶりとなる。卓球王国WEBでは今回も現地から速報をお届け。開幕に先駆け、大会の見どころを紹介していく。まずは男子シングルスから。

 

 1979年大会の小野誠治以来となる男子シングルスでのメダル獲得を目指す日本男子だが、今大会に出場するのは張本智和(智和企画)、宇田幸矢(明治大)、戸上隼輔(明治大)、及川瑞基(木下グループ)、吉村真晴(TEAM MAHARU)の5名。男子シングルス・男子ダブルス・混合ダブルスの3種目に出場予定だった篠塚大登(愛知工業大)は腰の故障により5月11日に出場辞退が発表され、当初は男子ダブルスのみに出場予定だった宇田が男子シングルスと混合ダブルスにも出場することとなった。5月12日に行われた会見でも、日本男子を率いる田勢邦史が「篠塚の分まで頑張りたい」と語ったが、その言葉どおりの活躍に期待したい。

 

 世界選手権個人戦には吉村が5度目、張本が4度目、宇田と戸上が2度目、及川は初の出場。また、吉村は過去4大会はダブルス種目のみの出場で、今大会で初めてシングルス出場となる。今大会は出場選手中の世界ランキング上位32名がシードとなり、優先的にトーナメントへ組み込まれ、それ以降の選手はランダムでドローされる。日本男子では張本と宇田がシードとなり、特に世界ランキング4位の張本は第4シードとして大会に挑む。これにより、樊振東・王楚欽・馬龍(いずれも中国)とは準決勝まで対戦しない。

 初出場の2017年大会では13歳にしてベスト8に進んだ張本だが、以降は2019年大会がベスト16、2021年大会は2回戦敗退と苦戦中。昨年の世界選手権団体戦では中国から2勝をあげるほどの実力を持ちながら、個人戦では中国以外の選手に敗れている。

 張本自らも「中国に勝つところまでここ数年上がれていない。中国とやれば自然と100%の力が出せる。まずは中国への挑戦権を手にするというのが大事」と語るように、まずは眼前の一戦一戦を必死に戦うこと。上位ラウンドで中国勢と対戦することができれば、中国越えでのメダル獲得も十分に期待できる。

 世界ランキング20位の宇田はこのところ国際大会ではなかなか結果を残せていない。しかし、急遽巡ってきたシングルス出場のチャンス、「失うものは何もない」というマインドでパワー溢れる速攻を披露してほしい。

張本は4度目の世界選手権個人戦出場で初のメダル獲得を目指す

宇田は急遽巡ってきたシングルス出場で大暴れに期待

 

 戸上、及川、吉村の3名はランダムにドローされるため、序盤から実力者と対戦することが予想される。中でも世界ランキング105位の吉村は1回戦から強豪と対戦の可能性が高い。それでも五輪でメダルを獲得、2017年大会では混合ダブルスで世界チャンピオンに輝き、ビッグゲームでの強さは折り紙付き。1月のアジア大陸予選でも馬龍を破るなど、その実力と勝負強さで番狂わせも十分に狙える。

 また、全日本チャンピオンの戸上も3月のシンガポールスマッシュでオフチャロフ(ドイツ)を破り、4月のWTTチャンピオンズ・マカオで林昀儒(チャイニーズタイペイ)にフルゲームまで迫るなど、世界トップランカーと互角に渡り合えるだけの実力はある。持ち前の強心臓で大暴れに期待したい。

 初の世界選手権個人戦出場となる及川も、国際大会で突出した成績こそ残せていないが「前回の団体戦で銅メダルを獲れたし、世界選手権独特の雰囲気も味わえたので、今大会でもメダルを目指して頑張りたい」とモチベーションは高い。シングルスのみのエントリーとなるが、クレバーなプレーで上位勢に一矢報いたいところだ。

序盤で上位ランカーとの対戦が予想される吉村

2度目の個人戦出場となる戸上は全日本王者の意地を見せたいところ

個人戦初出場の及川、昨年の団体戦での経験を生かしたい

 

 世界全体で見ると、今大会も優勝戦線をリードするのは中国だろう。中でも頂点に最も近い位置にいるのが樊振東・王楚欽・馬龍の3人だ。前回大会では天敵・馬龍が欠場する中で樊振東が初優勝。世界選手権というビッグゲームで馬龍を下しての連覇で、最強の男であることを証明できるか。

 世界選手権個人戦には2大会ぶりの出場となる馬龍は1大会空けての4連覇、そして史上3人目の4度目の優勝がかかる。一時期は国際大会から離れていたが、3月から復帰して次第に調子を上げてきている。かつての破壊力こそ影を潜めたが、卓越した戦術眼で次の伝説を刻むことができるか。

 現在世界ランキング2位の王楚欽は中国男子初となる「サウスポーのシングルス世界王者」の座を狙う。4月のWTTチャンピオンズ・マカオでは優勝を果たすなど着実に力をつけており、当たり出したら樊振東、馬龍ですら一蹴しそうな雰囲気がある。海外選手に取りこぼす試合が少ないのも強みだろう。

 この3人の他、中国からは梁靖崑と林高遠がシングルスに出場。ともにベスト8シードとなっており、張本のトーナメントに入る可能性もある。

連覇を狙う樊振東

五輪王者・馬龍は2大会ぶりの出場となる個人戦でどんな戦いぶりを見せるか

着実に強くなっている王楚欽は先輩たちの壁を越えたい

 

 中国が優勝戦線をリードしているとはいえ、男子はここ数年でアジア、ヨーロッパはもちろん、その他の国や地域からも有望な若手が続々と育っている。以前に比べ中国との差は縮まっており、様々なタレントが揃う、非常に楽しみな大会となっている。

 若手で言えば、前回大会でセンセーショナルな活躍で準優勝に輝いたモーレゴード(スウェーデン)、東京五輪ベスト8のヨルジッチ(スロベニア)、ヨーロッパチャンピオンのチウ・ダン(ドイツ)、この1年で急速に力をつけたルブラン兄弟(フランス)といった欧州勢が強力。スウェーデンではシェルベリもブレイク候補の一人だ。

 また、中堅では林鐘勲・張禹珍(ともに韓国)もここに来てまた力を増した印象。大会前のドイツ・ブンデスリーガで好調ぶりを見せていたフランチスカ(ドイツ)、アジア勢にも強いK.カールソン(スウェーデン)といった面々もおり、アルナ(ナイジェリア)もアフリカ開催に燃えているはずだ。

モーレゴードは前回大会の再現なるか

チウ・ダンは前回大会でも梁靖崑を追い詰めるなど健闘

3月のシンガポールスマッシュでは張本を破ったアルナ

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