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世界卓球2023

瞬きを忘れる超絶ラリー、これが世界最高峰の戦いだ。攻めの姿勢を貫いた張本智和、わずかに届かず

●男子シングルス準々決勝
梁靖崑(中国) 4(11、9、−12、−14、9、9)2 張本智和(日本)

ラブオールからゲームセットまで、緊張感のあるラリーが繰り広げられた張本智和(日本)対梁靖崑(中国)の男子シングルス準々決勝。6ゲーム目に9−10と梁靖崑にマッチポイントを握られた張本は、次のボールをミスするとその場にしゃがみこんでしばらく動くことができなかった。勝った梁靖崑はフロアに顔を覆いかぶせて、こみ上げる感情を必死に抑えた。

あまりに強烈な打撃戦、プレッシャーから解放された梁靖崑はその場でうずくまって動けず

日本男子として44年ぶりの世界卓球選手権男子シングルスのメダルを目指した張本。この試合ではプレーもメンタルも守りに入ることはなく、攻めの姿勢を貫いた。

1ゲーム目に張本が出した12本のサービスのうち、10本がロングサービスでショートサービスは2本。これまでの張本とはロングサービスとショートサービスの割合が反対だ。対梁靖崑の戦術としてロングサービスを多用し、そこからバックハンドで押していく強い気持ちを見せた。

ロングサービスからのバック対バックのラリーはまさに電光石火だった張本

2ゲーム目を落とした張本だが、3、4ゲームを奪い返してゲームカウントを2対2のタイにすると、5ゲーム目も9−7、9-8とリード。ここで張本が高く浮いたチャンスボールをフォアで強振するも、痛恨のミス。9−9からは梁靖崑がサービスを出すタイミングを変えて張本が2本のレシーブミス。9−11で落とした。

しかし、それでも攻め続ける張本。6ゲーム目は一進一退の攻防が続き、スコアは8−8。9−9から梁靖崑が2連続得点し、9−11。張本の追い上げはあと一歩届かず、メダルは次回に持ち越された。

プレッシャーからミスも多かった梁靖崑だが、大事な場面では1本をねじ込んできた

それにしても、すさまじい試合だった。両選手にとっても、生涯の中で忘れられない試合のひとつになるのではないか。そして、彼らの壮絶なプレーからは、卓球というスポーツの素晴らしさを再認識させられると同時に、明日への勇気と希望を与えてもらった。張本智和、梁靖崑、最高の試合をありがとう。

★張本智和・試合後のコメント
「2−2の9−8でのチャンスボールのミスは、ずっと心に残るプレーだと思います。でも梁靖崑選手の質の高いレシーブがあって、あのレシーブも浮いたけど切れていたので、梁靖崑選手だからこそぼくもミスしてしまったと思う。普通なら80%、90%は入るボールですけど、残りの10%をやってしまったなと。

梁靖崑選手が過去に外国選手に負けた試合の動画を見ると、相手はロングサービスをたくさん出していて、それにうまく対応できていなかった。コートに入った時に「いっぱい出してやろうかな」という気持ちになりました。でもあれだけ出して1ゲーム目を取れなかった。10−8で取り切れなかったので、対中国に勝つには取り切らないといけない。

(来月で20歳になる中での大会でしたが?)
振り返ってみると長かったなと。楽しい時期は一瞬で、15歳くらいから苦しい5年間でした。圧倒的な結果を残さないと周囲に評価してもらえない状況だし、シングルスでメダルを取れば評価されると思った。ただ、一瞬でも『世界で勝てる』と言ってもらえても、次に個人戦で負けたらまた『勝てない』と言われる。それは宿命なので受け入れるしかない。今回の結果は自分の最低限です。本当はメダルが最低限でしたけど、2年後の大会につながる、パリ五輪につながる試合はできました」

観客席の日本男子チームの声援にガッツポーズで応えた張本。素晴らしいプレーをありがとう

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