●女子シングルス準々決勝
早田ひな −4、3、9、−6、9、−8、19 王芸迪(中国)
早田ひな、世界ランキング3位の王芸迪をゲームオール21−19の超・激戦の末に破り、ベスト4進出!
王芸迪のベンチに入った中国女子の馬琳監督が、王芸迪がマッチポイントを握るたびに「決めてくれ!」とフェンスを何度も叩いた。最終ゲーム、早田がマッチポイントを握られること実に9回。断崖にかけられた、人ひとり通れるかという細道を往くような展開。アンラッキーなネットインやエッジがあれば、その時点でゲームオーバーだ。しかし、早田はその細道を登り切り、見事に中国の長城を越えて見せた。
1ゲーム目、王芸迪のシュートドライブを交えた猛攻にフォアサイドを突かれ、あっという間に落とした早田だが、2ゲーム目以降は王芸迪のフォア前、バック深く、ミドルへのハーフロングとサービスに変化をつけながら、先にフォアを突かれたボールもうまく緩急をつけ、王芸迪のミスを誘う。
「今日はバック対バックで、王芸迪選手が先にフォアに振ってきたボールは、私は全部ゆっくり返して、それに対して王芸迪選手もミスが出ていた。だから最後はバック半面の勝負になってきた。逆に私も王芸迪選手のフォアを突きたかったけど、相手の重心や止まるタイミングを見て打たないといけない。お互いに探り合いでした」(早田)
互いに一進一退の攻防の中、もつれ込んだ最終ゲームは早田が8−5のリードから、8−10と逆転、しかし早田が10−10に追いつく。会場は「王芸迪、加油!」と合唱する中国応援団と、「ヒナ!ヒナ!」と声援を送る観客の歓声が錯綜し、興奮は最高潮!
ジュースに次ぐジュースの連続の中、フォア強打が武器の王芸迪もレシーブではバックフリックで入れるだけ。バック対バックの痺れるようなラリー展開の中、18−19の王芸迪の9回目のマッチポイントをしのいだ早田が、最後は王芸迪の逆を突くバックハンドでフォアを抜き、ノータッチ。歓喜のガッツポーズ!
試合後のミックスゾーンでは興奮冷めやらぬ表情で、「アドレナリンが出すぎてます」と笑った早田。しかし、開口一番「中国の壁は本当に分厚すぎて、これを越えてもあと4人いるのかと、逆に現実を突きつけられた感じもあります」と語り、歴史的勝利にも「道半ば」の思いを強くしていた。その姿勢が実に頼もしい。
「本当に『点数取れないな』と思いながら、最後はちょっと笑っちゃって、『どうしよう、やることないよ』と思いながらやっていた。お互いにすべてを出し尽くして、コース取りもわかっている状態でお互いにどう打つかの勝負だった。長かったですけど、あの舞台を経験できてすごくうれしかったです。
伊藤(美誠)選手や平野(美宇)選手が中国選手に勝つ中で、私は全く勝てなくて、『早田は競るけれど負ける』という周りの評価を越えたかった。勝った瞬間はそのためにサポートしてくれた方々の顔が浮かんできて、本当に『やっと、やっとだな』という感じです。それでもこれだけ考えて、感じながらやっていくことで、世界一を獲るために少しずつ前進しているのかなと思います」(早田)
明日13時(日本時間20時)スタートの女子シングルス準決勝、早田の対戦相手は孫穎莎(中国)。1969年ミュンヘン大会優勝の小和田(現姓:竹内)敏子さん以来となる、女子シングルスのファイナリストを目指す。
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