パリ五輪男子シングルス準々決勝、張本智和(日本)と樊振東(中国)の戦いは、心技体智と互いに持てる力を発揮し、現代卓球における最高峰の戦いになった。
●男子シングルス準々決勝
樊振東(中国)4(2‐11、9‐11、11‐4、11-7、4‐11、11‐7、11‐7)3 張本智和(日本)
‐試合は1ゲームのスタートから張本がキレのあるバックドライブで樊振東を圧倒する。樊振東のフォアドライブにもフォアハンドのカウンタードライブが吸い込まれるようにサイドを切って入り、10‐1と大量リード。11‐3で張本が先取する。
2ゲーム目も強気で攻める張本に対して、樊振東は地に足がついておらず、踏ん張って打つことができていない。8‐8、9‐8、9‐9と競り合いながら、10‐9とゲームポイントを奪った張本は樊振東のミドルに長いツッツキをおくると樊振東はそれをバックドライブミス。張本の質の高い攻撃と「中国は自分しか残っていない」というダブルのプレッシャーからか、樊振東は「らしくないプレー」が目立つ。
しかし、樊振東は3ゲーム目で息を吹き返して11‐4で奪うと、4ゲーム目後半には飛びつきストレートカウンターやバックドライブで張本の逆をついてノータッチを奪うなど本来のプレーを取り戻す。5ゲーム目を張本、6ゲーム目を樊振東が取り、勝敗の行方は最終ゲームへ。
最終の7ゲーム目、張本は全力対全力の打ち合いのビッグラリーで得点するなど4‐2とリードを奪うが、ここから樊振東が4連続ポイントで逆転。それでも張本の心は折れることなく7‐7に追いついたが、樊振東がそれまであまり使っていなかった球足の速いツッツキからの展開を混ぜて張本の距離感を狂わせるなど戦術の引き出しを開けて4連続得点。11‐7で試合を決めた。
勝負の分かれ目が見えないほど拮抗していた両者の戦い。最終ゲームで張本が見せた強気のフォアフリック2本を反射的に手を出してカウンターで得点した樊振東。得点という目に見える部分ではこの2点が明暗を分けたのか。しかし、それはともにゾーンに突入し、死力を尽くした2人にしかわからない部分だ。
樊振東をあと一歩まで追い詰めた日本の張本。準決勝の扉まであと数ミリだった
なんという技術、なんというメンタルの強さ。王楚欽が敗れた後にひとりで歩く道。樊振東は走りきった
写真=ITTF/ONDA
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