●女子シングルス6回戦
石川佳純(全農) -6、4、-7、-5、11、11、8 加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部)
「今まで以上に嫌なところを攻められました」。昨年の全日本選手権、女子シングルス6回戦で敗れた石川佳純は試合後のインタビューで悔しさを滲ませながら記者の質問に答えていた。
あの敗戦から1年。順調にランク入りを果たした石川は、女子シングルス6回戦で、昨年敗れた因縁の相手である加藤美優と対峙した。
加藤は両ハンドを広角に打ち分け石川を左右に大きく動かすと、決め球のフォアドライブは石川のフォアストレートを徹底的に狙う。昨年と同様、石川は「嫌なところ」を攻められ続け、ゲームカウント1-3と窮地に立たされた。会場全体が、「石川が負ける」と思っただろう。だが、石川の闘志は消えていなかった。ただただ泥臭く加藤のボールに食らいついていき、5、6ゲーム目は加藤に9-10とマッチポイントを握られながらも逆転。長い長いラリーが繰り広げられ、石川が得点を奪うたびに会場から拍手が沸き起こる。石川が見せた勝利への執念に会場中が引き込まれていく。そして迎えたゲームカウント3-3の10-8。石川は4球目でフォアサイドに振られたボールに食らいつき、6球目で渾身のフォアドライブを加藤のフォアサイドに叩き込み大激戦に終止符。勝利した瞬間、笑顔で両手を広げ喜びを爆発させた。
本誌2月号に掲載されているインタビュー内で「卓球をやっている以上、次の目標があるし、毎回、自分が決めた目標が変わったとしても全力で取り組む。自分が決めた目標に対して自分を裏切らずに努力をする」と語っていた石川。五輪で3大会連続のメダル獲得、全日本では5度の優勝を誇るが、その裏には壮絶な努力が隠されている。その卓球に対するひたむきな姿勢が今回の勝利を呼び込んだのかもしれない。明日、準決勝進出をかけて佐藤瞳(ミキハウス)と対戦する。若手の活躍が光る女子シングルスに、「佳純旋風」を巻き起こすことはできるのか。
「今日は自分を褒めて良いと思います。後半は作戦よりも気持ちの方が大きく、5回チャンピオンになったときの精神を忘れずに頑張ろうと思えました。
(気持ちの切り替えは)できる時とできない時があるけど、この大会に向けて準備してきて『ここで負けるわけにはいかない』と、諦めない気持ちで戦いました。少しのチャンスが見えてきて、それを広げて勝てた。去年は攻めきれなかったけど、今年は最後に攻め切れたことが勝因だと思います」(石川)。
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