[卓球本悦楽主義9] 意気盛んな荻村の濃密な理論が展開。まさに卓球理論書の金字塔
パリ五輪卓球の混合ダブルスで、自国に初の金メダルをもたらした王楚欽/孫穎莎(中国)ペア。3年前の東京五輪では新たな種目として五輪に加わった混合ダブルス決勝で、日本の水谷隼/伊藤美誠ペアに逆転負けで銀メダルに終わった中国は、パリ五輪の混合ダブルスはなんとしてでも金メダルを獲得しなければならなかった。
その強い思いは初戦から表れていて、準々決勝のチャイニーズタイペイのペア、準決勝の韓国ペア、そして決勝の北朝鮮ペアとどれも接戦になったが、技術で押し切るだけではなく、気迫で上回った。
優勝を決めた中国ペアは、中国国旗を持ってコート内で笑顔で撮影に応じた。異変が起きたのは撮影を終えてベンチに戻ってからだ。王楚欽が決勝で使用したラケットのグリップ部分が折れていた。
国旗を持った写真を撮ろうとフロアのカメラマンが一同にベンチに殺到。その際にベンチ脇に置いていた王楚欽のラケットが踏まれてしまった。故意ではないにしろ、あってはならないアクシデントに見舞われた王楚欽は、悲痛な表情でラケットを何度も見ていた。
世界卓球やオリンピックを取材し、フロアで撮影している立場として、同じように試合直後にコート内の選手を撮影する経験を何度もしている。その際にベンチ付近に選手のラケットは置かれているが、大抵は椅子の上や自分のバッグの上に置かれている(卓球専門メディアとしてラケットの重要性がわかるため、同じような場面ではラケットがどこに置かれているのかを確認している)。
王楚欽がどこにラケットを置いていたのかは現時点ではわからないが、どこに置いていたにせよ、カメラマンを含めてメディアは細心の注意を図らなければいけない。
王楚欽は試合後の会見でラケット破損について聞かれると、「自分の感情をコントロールできなくなった。わざとではないと思っていますが、なぜカメラマンたちがそんなことをしたのか理解しがたい。でも、すでに起こってしまったことなので、ぼくには何もできません。スペアラケットを使えば良いプレーができると信じている」と気丈に話した。
この件についてテレビ東京のキャスターとして現地入りしている水谷隼さんは自身のX(エックス)で次のようにポストしている。
「ラケット折られたのは可哀想すぎる。
プロの選手は1グラム単位で重さを指定して、自分の持ちやすいグリップに加工して、汗や湿気で弾みも変わってその都度調整して、馴染んできてやっと自信を持って信じれるようになる唯一無二のパートナーなのに。ラバーの破損は変えがきくし、ラケットの傷や汚れ程度なら何とかなるけど折れたラケットは絶対元に戻らない…
時間をかけてやっと完成させたラーメンのスープをまた1から作り直してくださいと言われるようなもんだよ。
同じくらいの実力の選手と、自分の物じゃないラケットで試合したら10000%勝てない。」(原文ママ)
王楚欽はスペアラケットを使用して、現地時間の7月31日の10時から男子シングルス2回戦でモーレゴード(スウェーデン)を迎える。
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