いよいよ競技がスタートした世界選手権個人戦・ダーバン大会。アフリカ大陸での開催は1939年エジプト大会以来、実に84年ぶり。南アフリカでは初の開催となる。開催地となっているダーバンは国内でヨハネスブルグに次ぐ人口を誇り、古くから高級リゾート地として知られる海沿いの街。ラグビーや水泳などの世界選手権も開催されており、2010年のFIFAワールドカップでは会場のひとつにもなっている。
そんな街で開催されている世界選手権だが、競技初日となった昨日は10時開始の試合前、8時過ぎにメディアルームに到着すると地元の業者さんたちが各テーブルに電源を引く作業をこの時間になっても行なっている模様。2時間後には試合がスタートするフロアを下見に行っても、照明やフロア周りの様々な箇所で工事を行なっている姿を目にする。2010年のワールドカップの際も「開幕1週間前なのに道路も会場も絶賛工事中」などというニュースをよく目にしたが、今大会もどうやらそんな様子でスタートを迎えた。ちなみに練習会場横を歩いていると、目の前を鳥が遮っていく姿も目にした。
「卓球が盛ん」とはいえない南アフリカでの世界選手権、大会初日の観客の入りはというと、やはり空席が目立つ。ステージ1、ステージ2、ステージ3・4、ステージ5・6・7・8というように、フロアが4分割されているのだが、なかには地元の方はスタッフのみ、というフロアもあった。
そんな中で最も観客が入っていたのは決勝が行われるステージ1のフロア。最初はそこまでの盛り上がりはなかったものの、途中からスティックバルーンを手に、特定の選手の名前をコールするなど、やたら盛り上がり始めた。
誰の応援をしているのかと思ったら、南アフリカの選手でもなく、アフリカ大陸の選手でもなく、オーストラリアから出場のディクソンに向かって大声援を送っている。「あ、同じ南半球だから?」などと思っていたのだが、次の申裕斌(韓国)とチャン・モー(カナダ)の試合では申裕斌への声援が多数。そう、見ていてなんとなく気づいたのだけども、彼ら彼女らは「この選手に頑張ってほしい」と願ってスティックバルーンを叩いて声援を送っているのではなく、ただ「盛り上がりたい」だけなんじゃないか、と。まあ、それで大会が盛り上がるのならばウェルカムなのだけども。
そして、その申裕斌とチャン・モーの試合でちょっとした事件が発生。申裕斌のベンチ横で写真を撮っていると、どこからかフラフラと1人の老人が登場。「最初はスタッフかな?」と思っていたのだが、どうもそんな雰囲気ではない。ベンチの後ろで試合を見ていたかと思うと、そのままフラフラと申裕斌のベンチ内に入り、空いていたソファに腰を下ろす。
その時、申裕斌は試合真っ最中。ベンチに入っていた趙彦来コーチがその老人に気づき、「誰だ、この人?」という表情を浮かべ、焦って周囲のスタッフに助けを求めるようにキョロキョロと辺りを見渡すが、コート以外は照明が落とされているため誰にも気づいてもらえず。結局、ゲーム間になって申裕斌にアドバイスを伝えた後に、趙彦来コーチがスタッフのもとへ向かって「いつの間にか知らない老人がベンチにいる」と伝え、老人は退場となった。
このように、だいぶおおらかな感じで競技が進み始めた今大会。昨日17時からはオープニングセレモニーが行われ、地元のミュージシャンや民族楽器の演奏、民族舞踏の披露などのパフォーマンスが会場を盛大に盛り上げ(最後の方は盛大すぎてどこを見たら良いのかわからず)、本格的な大会の開幕を迎えた。セキュリティやら運営やらの問題はともかく、取材をする中で地元の方々のホスピタリティをひしひしと感じられたのはうれしいこと。ここから8日間、どんなドラマ(ハプニング含む)が会場で見られるのか。
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