●女子シングルス・銅メダル決定戦
早田ひな −9、11、10、7、−10、7 申裕斌(韓国)
勝利の瞬間、その場にしゃがみこんで号泣した早田ひな!
限りない感動をありがとう。涙・涙の銅メダル獲得!
苦難の末の銅メダルに、早田は涙が止まらず……(Photo:ITTF/ONDA)
一昨日の準々決勝、ピョン・ソンギョン(北朝鮮)戦で左腕を傷めた早田。昨日の孫穎莎(中国)との準決勝では「普段の自分とのギャップで、現実を全然受け入れられないままプレーしていた」という。この銅メダル決定戦でも、試合が始まる5分前までは、左腕は普段の20〜30%の状態までしか戻っていなかったという。
しかし、その試合開始直前に痛み止めの注射を打った早田。「もしかしたらいけるかも、というところまで感覚が戻ってきた。自分を信じて戦うしかなかったです」(早田)。
試合の序盤はまだバックハンドに故障の影響が感じられ、特に申裕斌にゆるく繋がれたボールに対してミスが増えていた。サービスも自在に出せるわけではなかったが、1ゲーム目を落とした2ゲーム目の0−2の場面では、サービスが3回連続でレット(ネットに触れて入る)になるなど、少しでも低く厳しく出そうという意思が感じられた。
序盤はバックハンドが思うように振れない中でも、自分のやれることを必死で模索した早田(Photo:ITTF/ONDA)
試合の最初のポイントは2ゲーム目。1ゲーム目を落とした早田が10−9でゲームポイントを奪うが、ここでラリーで優位に立ちながら、申裕斌のバックハンドがエッジ。さらにこの試合のラリーの基本となった、ミドルでのバック対バックのラリーで申裕斌が粘り勝ち、10-11でゲームポイントを取り返された。
このゲームを落として0-2になっていたら非常に厳しかったが、早田はラリーで粘り強く得点し、13−11と逆転でゲームを返す。早田はこの2ゲーム目を取ったことで息を吹き返し、感覚の戻ってきた左腕を自信を持って振れるようになってきたように感じた。
次第にバックハンドも強く振れるようになってきた早田。3ゲーム目以降は主導権を握った(Photo:ITTF/ONDA)
ラリーに強い申裕斌だが、早田にフォアミドルをうまく攻められた(Photo:ITTF/ONDA)
そして試合の最大のポイントは3ゲーム目の終盤。5−5から6−8、7−10と離されてゲームポイントを取られた早田だが、9−10まで挽回し、3球目フォアドライブをネットをかすめてねじ込む。5点連取で12−10と逆転して3ゲーム目を奪い、試合の主導権を握った。なんという底力だ。
早田がゲームカウント3−1と勝利に王手をかけた5ゲーム目は、最後に申裕斌に強烈なチキータを打ち込まれて10−12で落としたが、早田はほぼ普段どおりのプレーを取り戻していた。6ゲーム目はフォアでの緩急をつけたつなぎからフォアドライブで逆襲するなど、早田らしい緩急も見せて7−2とリードを広げ、10−7でついにマッチポイント。最後は投げ上げの下回転サービスに対し、申裕斌のフォアドライブがネットを弾いてコートを外れた!
申裕斌と笑顔で健闘を称え合った後、「頑張った!よく頑張った!」と叫ぶベンチの石田大輔監督と固く抱擁を交わした早田。両者とも涙・涙……見ているこちらまで泣けてきた。
これまで二人三脚で歩んできた早田と石田コーチが、試合後にふたりでハートマーク(Photo:ITTF/ONDA)
「もちろん金メダルを狙っていたんですけど、まさか神様にこんなタイミングで意地悪されるとは思っていなかった」。試合後の会場インタビューでそう語った早田。その「神様のいたずら」の中でも自分でやれることを必死に模索し、日頃の練習で培った幅広い技術が早田を助けた。大いに苦しみながらも、またここから新たな早田ひなの卓球の地平が広がるのではないかという、可能性すら感じさせた。
「どんな結果になっても最後までやり続けて、日本の皆さんに銅メダルを見せられたらという気持ちで戦いました」(早田)。素晴らしい試合をありがとう。そして銅メダル、おめでとう!
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